研究概要 |
過去2年間の研究成果を基礎にして基礎理論の体系化と計算機処理システムの具体化を検討した.理論面での主な成果は(1)「地層累重の法則」をはじめとする地質調査に関係する地質学の基礎概念を離散数学の見地から定式表現する方法を確立したこと,(2)堆積作用と侵食作用で形成される地質構造に対する論理モデル(地層の分布域と境界面の論理的関係)の一般表現を与えるとともに地質図作成過程における位置づけを明らかにしたこと,(3)野外調査データから地質図を作成するまでの全過程(露頭観察,地層の対比,層序区分,境界面と地質体の論理的関係,境界面の推定,3次元地質モデルの構築,地質図の作成)におけるデータ処理の原理を体系的に定式化したことである.これらの成果は地質図の作成という当面の目標だけでなく,地質学の数学的基礎や地質学における情報処理理論の確立に展望を与えるものである.計算機処理システムの面での成果は(4)GIS(地理情報システム)の一種であるGRASS(The Geographic Resource Analysis Support System)に走向・傾斜データの処理機能や曲面推定機能などいくつかの機能を追加することによって,データ入力から地質図を作成するまでの全処理をGRASS上で実行するシステムを完成したこと,(5)情報処理システムの有効性を新潟県小千谷地域における地形の標高データ,層序および地表での地質分布,走向・傾斜,断層の位置を入力データとする3次元地質構造の復元作業を通じて検証したことである.空間情報の入力・管理・解析・モデリングの標準技術としてGISが多くの分野で実用されている現在,地下の地質情報をGIS上で処理できる道を開拓したことは諸分野での地質情報の共有・活用を促進する上で重要な意義をもつ.
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