研究概要 |
本年度は,南西諸島喜界島に発達する完新世および更新世サンゴ礁段丘,伊良部島沖の島棚で発見された沈水サンゴ礁,およびフィジ-諸島の隆起サンゴ礁を対象として年代学的並びに堆積学的研究を進め,以下の成果を得た. 1.喜界島の北東部志戸桶海岸において,完新世サンゴ礁段丘の形成過程を知る目的でボーリング調査を行い,回収率90%以上の炭酸塩堆積物から成る5本のコア試料を得た.そして,それらコア試料の岩相解析と造礁サンゴの放射年代測定結果に基づいて,完新世サンゴ礁段丘を構成する礁性堆積物が,更新統の早町層を不整合に覆いながら約1万年前から堆積を開始したこと,その後“サンゴ石灰岩"が平均4.1m/kyの速度で堆積したこと,さらに堆積速度が少なくとも2度変化したことを確認することができた. 2.伊良部島南西沖の島棚縁(水深15.2mおよび45.5mの地点)で回収された2本のボーリングコア試料について岩相解析とウラン系列年代測定を行った.その結果,おおよそ1万年前からの急速な海面上昇は決して一定速度で進行したのではなく,約8,900年前から約7,900年前の1,000年間において,一時上昇速度を減じたか,あるいは海面が一時的に停滞した可能性があり,その後再び急速に上昇した証拠を見出した. 3.南太平洋大学(Unlverslty of the South Pacific)のP.Nunn教授との共同研究を行い,フィジ-諸島の海岸部で観察される完新世の海面高度指示者としての波食地形(ノッチ)が,12-13万年前の“Last Intergalcial"と20-22万年前の“Penultimate Interglacial"の2回の間氷期に形成された“サンゴ石灰岩"に刻み込まれていることを明らかにすることができた.これによって,それぞれの間氷期における海面高度とその後のフィジ-諸島における地殻変動(隆起)量を推定する端緒を得た.
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