研究概要 |
南西諸島の喜界島,パプアニューギニア・ヒュオン半島,フィリピン諸島パングラオ・パラワン両島およびフィジー諸島カダブ島に分布する完新世と後期更新世の隆起サンゴ礁を対象とした年代学的並びに堆積学的研究を進め,以下の成果を得た. 1. 過去13万年間の地殻変動(隆起)量が本邦で最大の喜界島には,海水準が現在より65〜85m低いとされているおおよそ70〜40kaのサンゴ礁構成物(サンゴ石灰岩)が分布する.しかし,同じように激しい地殻変動が知られるパプアニューギニア北東部のヒュオン半島やパヌアツ諸島とは異なり,西太平洋域におけるサンゴ礁形成場としては北限に近い喜界島上のそれら礁成堆積物は,最終間氷期(約13〜8ka)の前礁成堆積物を直接覆いながら,島上に点在することが確認された.このような礁構成物と礁前緑相との層序関係から,現在喜界島の高度約70以下の低位段丘構成物が,酸素同位体ステージ5eから3にかけての海面低下(海退)にともない,水深が60〜150m(島棚)から0〜5m(海面直下)と変化した環境下で堆積したことが明らかになった. 2. ヒュオン半島のサンゴ礁段丘構成物から,140ka頃の急激な海面上昇が,130ka頃に短期間ながら中断し,約14mの海面低下後,再び上昇を続けたことを論じた. 3. パングラオ・ルソンおよびマクタン島の更新世サンゴ礁段丘の研究によって,日本列島と同じ西太平洋活動縁辺域に位置するフィリピン諸島とはいえ,少なくともその一部に,過去13万年殆ど変動していない地域があることを解明した. 4. 南太平洋大学(University of South Pacific)のP.Nunn教授との共同研究を続行し,特にフィジー諸島カダブ島の“Last Intergalcial"および“Penultimate Interglacial"以降の地殻変動(隆起)史を明らかにする基礎データを得た.
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