研究概要 |
本年度の研究実績の概要は以下のとうりである。(1)バクテリア起源磁鉄鉱の問題では,新潟県下の池潟沼の試料からデータをあつめ、磁鉄鉱の結晶学的特性の解析をすすめ,涙的型のもので伸長方位が[100]という磁化容易軸でない方向での例を多数みとめられた。これは何らかの進化上の意味があるだろうことを推定した。この結果は北京で8月開かれたIGCで発表してまとめた。これとともに,8月のScience誌に,Mckayらによる火星隕石から生命の痕跡の可能性があるという論文がだされたが,その証拠のひとつとして,このバクテリア起源磁鉄鉱があげられていたことから,それらの意義,とくに生命活動との関連で,広く議論・論評した。その一部は論文にまとめつつある。(2)生物関与の鉄鉱石の問題では従来無機的沈澱とされてきた群馬鉄山他から広く試料を得て,記載することをめざし,新たに長野県諏訪鉄山の例について検討し,群馬鉄山と類似していることをみいだした。群馬鉄山の例については,記載をもとに,生成条件と生成メカニズムについて,北京のIGCで発表して,ポロシ-ディングスと鉱物学雑誌にわけてまとめた。つまり無機的過程も一部加わりながら,植物とバクテリアが関わった一種のBio-Oreであろうと結論づけた。IGCでの発表がきっかけで,中国の研究者と,関連する鉱床についての共同研究が進展しつつある。これら分析をすすめる上で,新型エネルギー分散型X線分析装置(Voyger IV: Noran Instrument)によるグレードアップができ,より正確・迅速な化学分析ができるようになっている。
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