平成8年から10年の3年間にわたって、東ガート帯及び周辺の関連地域の全体像をつかみ、その造構史を明らかにする目的で、文献の組織的収集と整理、地質試料の分析、解析的研究を実施した。新規購入備品である流体包有物解析システム(YAGAIFLUID)は、これらの研究に利用された。主な研究成果の概要を下に記す。 1)東ガート帯中部から北部にかけて詳しい岩石学的研究を実施し、この地域が高温高圧のグラニュライト相変成作用や中程度の角閃岩相変成作用を重複して受けていることを確認した。 2)EPMAモナザイト年代やSm-Nd年代からは、20億年前から5億年前の間の数回の変動が推定された。主変成作用は約12〜14億年前のアルカリ深成岩類の貫入事件の前と認められ、約20億年前と約15億年前で関連火成岩の性質から、それぞれ圧縮場及び伸張場における変動であったと考えられる。その後、約10億年前にも圧縮場におけるグラニュライト変成作用があり、さらに約8億年前と約5億年前には、花崗岩の貫入を伴う再変動があった。東ガート帯西縁部分では約28〜26億年前の変成年代が得られており、この部分は基盤の再変動地帯と考えられる。 3)東ガート帯のこのような多時階の変動は、そのすべてを周辺のゴンドワナ陸片に追跡することは出来ない。同帯の北東延長にあたる南西オーストラリアのアルバニー・フレイサー帯では、約10億年前変動とそれより古い事件が、南東延長である南極のピア・レイナー帯では、10億年変動とそれにより新しい事件が、よく追跡される。このことは、約10億年前頃に、東ガート帯周辺のゴンドワナ陸片地域に大きなテクトニクスの変換が生じたことを示していると考えられる。 4)以上の研究成果は、国外誌や英文紀要等の学術論文59編、英文の学会メモア・学位論文などの書籍15冊、国際学会などにおける学術講演56題として発表された。
|