研究概要 |
本研究では二次イオン質量分析計を使って岩石試料中の軽元素の濃度,同位体比,およびマッピングを行うことを目的とした.一般に二次イオン質量分析計で絶縁物の測定を行うのは高度の熟練を要するので,本研究では金属試料の測定を用い,応用として鉄隕石の分析を行った.なお以下の報告は炭素・窒素についてのものであり,水素については平成9年度に行う予定である. まず炭素,窒素の検出限界はそれぞれ20ppm,50ppm程度である.これはこれまでの二次イオン質量分析計での分析が炭化物・窒化物に限られていたことと比べると格段に良くなっている.これは主に二次イオンの引き出し電圧が高くなったことによっている.またこの検出限界はコンタミネーションによって決まっており,これを押さえることにより.さらに検出限界を下げることは可能と思われる. 次に同位体比の測定では20分以内の測定で統計誤差5パ-ミル以内という条件で測定できるためには炭素・窒素の濃度はそれぞれ50ppm,300ppm程度必要である.高い窒素濃度が必要なのは高い分解能が窒素同位体比分析に必要なことを反映している.同位体比の再現性は,炭素で1日で3パ-ミル,窒素で4カ月で4パ-ミル程度である.炭素の場合測定条件によって日々の変動が激しい.一方窒素は数カ月にわたって比較的安定した再現性を示す. 応用として鉄隕石を測定した結果,炭素・窒素の分布が隕石によって異なっており冷却速度を反映している可能性があることが解った.またある種の鉄隕石の炭素の同位体比が顕著な異常を示すことも解った.
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