研究概要 |
地球表層を取り巻いているプレートとプレートの境界面は、地球深部への覗き窓であると同時に、海水の循環を通して駆動される海洋と地球深部との間の物質循環の場でもある。プレート境界における湧水(熱水および冷湧水)の化学的性質や化学フラックスは,海洋全体の物質循環の中で大きな役割を果たしていると考えられ,その規模の定量化が急がれている。湧水を化学的に特徴づける有効なトレーサーとして、メタン・ヘリウム・二酸化炭素等のガス成分がある。本研究では,主としてこれらの溶存ガスに注目し,他の溶存化学成分データとも対比しながら,湧水中のガス成分の濃度,同位体比,起源,およびこれらの時空間変動について調査を進めてきた。本年度は,(1)「しんかい2000」による沖縄トラフ熱水活動調査,(2)「アルビン号」による南部東太平洋海膨海底熱水活動の潜航調査,および(3)「しんかい6500」によるインド洋中央海嶺の熱水活動探査を実施した。(1)および(2)はこれまでの調査の継続であり,熱水活動の時間変動を検出するとともに,新たな熱水試料採取とガスクロマトグラフによるガス分析を実施した。(3)は世界初のインド洋中央海嶺潜航であったが,熱水噴出口の確認には至らず,熱水採取は次回に持ち越された。最終年度として,これまでに得られた熱水や冷湧水の気体成分分析データの解析と取りまとめを重点的に行った。地球惑星化学関連学会合同大会(1998.6.東京)や,アメリカ地球物理学連合秋季大会(1998.12,サンフランシスコ)などの学会で成果報告を行い,東部南海トラフ周辺海域の冷湧水の化学的性質について原著論文を公表した。
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