マグマ中の溶けている水と水蒸気との間ではマグマの温度(880°C以上)においてもなお大きな水素同位体分別のあることが知られている。したがって火山放出物中のガラスの含水量と水素同位体比の変化はマグマの脱ガスプロセスの良い指標となることが期待される。本研究では爆発的な噴火やドーム形成型の噴火のように噴火スタイルに違いのあるマグマの脱ガス過程を、主に含水量や水素同位体比の変化から解明することを目指している。 平成8年度は以下に述べる進捗があった。 (1)微量試料の高精度水素同位体比測定のために既存の質量分析計の電源部を今回購入した安定性の高い加速電源・イオンソース電源と入れ替えた。これらの電源はパソコンにより制御される。標準試料を用いて望む精度で水素同位体比測定が測定できることを確認した。微量の水素を取り扱うことができるように試料導入系の一部を改良する必要があり、現在、改良中である。 (2)ドーム形成の典型である1991年雲仙・普賢岳(デイサイト)および1707年富士山(玄武岩)噴火の試料を入手した。試料の薄片を製作し岩石学的に観察した。試料をガラスと斑晶に分離し、ガラスについては真空加熱法により溶存している水を抽出し、含水量を定量した。水素同位体比測定には改良された質量分析計を使用した。含水量と水素同位体比の関係から、両火山の噴火前のマグマの含水量を推定するとともに、マグマの発泡・脱ガスがどのように進行したかを検討した。 (3)今後は試料導入系の一部を改良し、微量試料の同位体比測定が可能になるように努力する。また噴火スタイルの異なる他の火山の試料について測定を重ね、マグマの発泡・脱ガス過程を検討する予定である。
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