研究概要 |
マグマ中に溶けている水と水蒸気との間では800℃以上でも大きな水素同位体分別があるので、噴出物の含水量と水の水素同位体比はマグマの脱ガスプロセスの良い指標となる。本研究では噴火スタイルの異なるデイサイト質のドーム形成型および爆発的な噴火のマグマの脱ガス過程を、主に含水量や水素同位体比の変化から解明することを目的とした。 平成9年度は以下に述べる成果を得た。 (1)ドームの形成の典型である1991年雲仙・普賢岳(デイサイト)の溶岩および噴石試料の全岩と斑晶(ホルンブレンドと黒雲母)について含水量と水素同位体比を測定した。これらのデータを基に1991年噴火に関与したマグマの地下深部における含水量と水素同位体比を推定した上で、閉鎖系および解放系による脱水モデルを考察した。このマグマは火道を上昇する間に著しく脱水が進行しており、溶岩および噴石試料に含水量が0.5wt%を超えるものはまれであった.含水量と水素同位体比の関係は,モデルによる説明が難しく、マグマが地表付近に至って粘性のきわめて高くなってからの動的な同位体効果が同位体比の変動を支配していたと解釈された。これらの結果は、現在、国際誌に印刷中である。 (2)1707年富士山(玄武岩)噴火に由来するスコリア試料について含水量と水素同位体比を測定し、両者の間に負の相関があることが見い出された。ハワイの玄武岩のスコリアについても同様な傾向があり、高温の玄武岩マグマが噴出する際に、かなりの水が2価鉄により還元されて水素となって系外に逃げている可能性が指摘された。
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