本研究課題はコンドライト質隕石がその母天体でそのような熱的な履歴を経てきたかと言うことを、化学組成から考察することを目的とするものである。従来、コンドライト質隕石の分類に岩石学的分類と化学的分類が用いられてきたが、岩石学的分類は隕石の熱変成の程度に基づいて判断されてきたもので、化学組成の情報とは直接関係づけて議論されることはなかった。本研究で注目する元素としては、希土類元素、トリウム、ウラン等の親石元素、白金族元素を中心とする親鉄元素、それに揮発性元素としてハロゲン元素をとりあげた。このうち、はじめの2つのグループはいわゆる難揮発性元素に属し、隕石全岩試料中ではその相対的組成は太陽系の元素組成に等しく、コンドライト隕石の全岩の含有量には全く差が生じない。しかし、隕石構成鉱物間での分布を調べると、熱的変成作用の影響の程度によって大きく異なることが本研究によって明らかにされた。同様の変化は、金属相中の白金族元素の分布においても明らかとなった。このように、本研究ではこれまで隕石の受けた熱的履歴を表すパラメターとして用いられてきた岩石学的変化に対応する化学的変化を始めて明らかにすることができた。同様の変化を、ハロゲン元素の全岩での含有量においても明らかにできるものと考え、研究を進めたが、分析操作の確立に予想以上の期間を要し、最終年度において分析法の確立は達成されたものの、実施料に適用するまでには至らなかった。今度の課題として残された。
|