研究課題/領域番号 |
08454172
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村井 久雄 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (50142261)
|
研究分担者 |
岡田 恵次 大阪市立大学, 理学部, 教授 (50152301)
前田 公憲 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (70229300)
|
キーワード | スピンダイナミックス / 過渡吸収検出磁気共鳴法 / 電導検出磁気共鳴法 / コンタクトラジカル対 / 交換相互作用 / ラジカルイオン対 / TMPD / ESR |
研究概要 |
凝縮相光化学反応系においては、スピンダイナミックスが化学反応において重要な役割を演じている。本研究の主たる目的は、未だ明らかにされていない初期生成準安定コンタクトラジカル対の生成と、そのラジカル対における項間交差過程を明らかにするものである。本計画では、光反応直後に生じるラジカルイオン対のスピンダイナミックスを、高速時間分解電導検出磁気共鳴法と光の過渡吸収検出磁気共鳴法の組み合わせにより解明した。 TMPDのアルコール溶液における光イオン化反応過程で生じる中間体ラジカルイオン対を、今回の研究対象とした。ESR共振器内に白金電極を封入した石英セルを挿入し、レーザー照射後の過渡的電導度変化から、TMPDのカチオンと溶媒和電子によるラジカルイオン対検出の試みに成功した。本手法におけるラジカルイオン対の観測は世界的に例を見ない。この系に関して、やはり新規に開発したESR共振器内における過渡光吸収検出を試みた。その結果、データの質は劣るが同様の結果が得られ、得られたスペクトルと時間変化がラジカルイオン対によるものであることが確認できた。このスペクトルは非常にブロードで、イオン間の交換相互作用のような強い相互作用を反映しているものと結論づけられた。すなわちコンタクトに近い状態か、接近して運動しているラジカルイオン対であると思われる。スペクトルの詳細な理論的解析は現在進めているが、継続年に引き継がれることになる。 さらに、本電導検出法を、キサントンとジエチルアニリンの系における光誘起電子移動反応への応用を試み、成功を納めた。その結果、生じたラジカルイオン対は200ナノ秒と非常に長い寿命を持つことが、今回の研究から明らかとなり、その長い寿命の原因の解明を進めている。
|