本研究では表面単分子吸着層とそれらの原子分子からなる二成分クラスターとの類似性に着目し、クラスターおよび分子吸着表面の高感度光電子分光法を開発しその類似性を検討することを目的としている。 本年度は研究に用いる真空槽の整備および内部部品の設計・製作を行った。真空槽は三段に差動排気されており、これらの内作・表面処理の後組み上げ、真空試験を行った。その結果現在までにどの真空槽も10^<-8>Torr台を達成している。 電子エネルギー分析器に関しては特に低濃度のクラスター負イオンに対応させるため、磁気ボトル効果を利用して高感度化を目指している。研究当初は磁気ボトル効果を利用した電子集束部と半球型分析器とを併用して真空紫外連続光によって電子を脱離させることを計画していた。しかしながら電子の軌道シミュレーション計算を行った結果、飛行時間型分析器内部にパルスゲートを設ける方式に変更した。クラスタービーム生成部はレーザーを用いたパルス実験と連続ビームによる真空紫外光実験の双方に対応させており、どちらの場合も固体ロッドをレーザー照射によって蒸発させてクラスターを生成できる。この生成部の下流にイオン引き出し部、質量分離部、減速部を設けて電子エネルギー分析器へと導く。これらの内部部品は現在製作中であり、完成次第予備実験に入る予定である。
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