ロシア製BWOおよびGUNNダイオードを発振源としたミリ波・サブミリ波分光装置を製作した。2本のBWOにより450GHz-860GHzの領域を、GUNNダイオードの3逓倍を取ることにより240-300GHzの周波数領域で分光が可能である。位相ロックされたGUNNダイオードにさらに位相ロックをかけることによりBWOの周波数を安定化している。ホローカソードセルおよびextended negative glow放電セルを製作し、従来未測定であったHCO+、HN2+、DCO+、H2COH+等のイオン種のスペクトルを観測し、サブミリ波天文観測に必要な遷移周波数を精密に決定した。また、地球上層大気中でオゾンの光分解で発生する電子励起状態の酸素(1Δg)の衝突幅を初めて求めた。このデータは上層大気中における酸素(1Δg)の分布を決定するのに必須の情報である。さらに、イオン・フリーラジカル等の不安定分子およびそれらの分子錯体のサブミリ波観測を行うために、放電ノズル装置を製作した。パルス放電ノズルを分子源とした場合、より効率良く信号を検出するための一手段として、周波数-放電二重変調法を開発し、上記イオンについてテストを行い十分高い感度が得られることを示した。一方、超音速分子線を用いた実験はカナダ国立研究所グループとの共同研究の一環として行い、Ar-CO、NO-NOのミル波スペクトルを観測し分子観相互作用に関して新たな情報を得た。
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