研究概要 |
我々はフラーレンの高いラジカル捕捉力を利用して、オクタフェニルシクロテトラシランおよびオクタフェニルシクロテトラゲルマンをC_<60>に修飾することができた。この誘導体の反応性を調べる目的で種々の反応を検討したが、五塩化二りんやメチルリチウムによる開環反応は進行しなかった。しかし臭素を用いた場合には、臭素による開環は起こらなかったが、9,10-ジシラアントラセン誘導体が得られた。このジシラアントラセン誘導体の構造決定は、二次元NMRおよびX-線結晶構造解析により行なった。このようなフラーレンを用いたケイ素化合物の合成は未だ例がなく、フラーレンの特異な性質によるものと考えられる。また、フラーレンケイ素誘導体の合成法を開発する目的で、シリルリチウム試薬C_<60>の反応を検討した。この反応においては、ケイ素上の置換基によりモノ付加体とビス付加体を選択的に生成することを見いだした。このモノ付加体の構造は一次元および二次元NMRにより1,2-付加体であると決定した。さらにビス付加体の構造は一次元NMRおよびX一線結晶構造解析により決定した。このビス付加体の構造は、1,16-付加体と呼ばれる新規な付加様式をとっている。この1,16-付加体の存在は理論計算により、その存在が予測されていたが、実際に付加体を単離し、NMRおよびX-線結晶構造解析によりその存在を明らかにしたのはこれが初めてである。この1,16-付加体の単離は多くのフラーレン研究者に評価を受け、国際学術雑誌 Angew.Chem.Int.Ed.Englに投稿することができた。
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