研究概要 |
本研究では理論と実験研究を並行して行い次の三課題を段階を追って検討した.(1)複数金属クラスターを活性種として用い,単一金属では達成できない高活性,高選択性を持つ反応系を開発する.(2)アリル金属の構造と反応選択性の相関を明かにする.(3)オレフィン基質の検討を行い,一般性に高く反応機構的にも信頼度の高い反応として確立する.本年度は(1)の理論と実験,(3)の実験研究に重点を置き検討を加えたところ,課題(1)の理論研究ではC-C多重結合へ付加する複数金属クラスターの反応代表例である銅/リチウムアート錯体を検討し,銅とリチウムがどのような役割を担って反応しているかを明かにすることができた.また実験的には理論的成果を配位子や反応条件検索の発想のもととし,Cu/Zn,Fe/Mg,Ni/Znなどのソフト/ハード金属の組み合わせに基づく2成分系触媒による高活性オレフィンカルボメタル化反応を検索した.このなかで,オレフィン類に対するアリル金属化合物の付加反応の立体化学を支配する要因を明らかにすることができたと同時に,亜鉛化したヒドラゾンがオレフィン類に付加するというこれまでにないエノラート誘導体の反応様式を発見し,学術雑誌に投稿した.
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