研究概要 |
1.関連化合物の合成の試み(樋口) 標題化合物の出発物質となるアヌレンジオンのうち、まだ、合成されていないメタノ架橋アヌレンジオン類の合成を試みた。すでにわれわれは、対応する鎖状ジケトン類のGlaser法によるカップリング反応により、1,4-ジクロロブタトリエン構造を含む[16]-、[20]-および[24]アヌレンジオンが生成されることを見いだしている。これらのアヌレンジオンはそれぞれD_2SO_4中では極めて安定なジカチオン種を生じ、それらは非常に大きなdiatropicityを示した。また、そのdiatropicityの強さは、環が大きくなる順に大きくなることを見いだした。このことは理論面からは指摘されていたが、従来のアヌレン化学においては、見いだされていなかった事実であり、生じたジカチオン種が結合交替の小さい、非局在化の大きい系であることが示唆された。そこで、環の大きさの増大に伴って、diatropicityが大きくなる事実が、[16]アヌレンジオンよりも小さい環や[24]アヌレンジオンよりも大きい環についても観察されるかを検討すること、また標題化合物の出発物質に用いる目的で、メタノ架橋[12]アヌレンジオンおよびメタノ架橋[28]アヌレンジオンの合成を試みたが、いずれも不成功に終わっている。 2.ジアザアヌレンの合成の検討(尾島) すでに報告した方法に従って、[16]アヌレンジオンを合成し、ジアザアヌレンの合成の中間体となるジオキシム体を得るために反応条件を種々検討しているが、まだ、対応するジオキシム体を得るには至っていない。
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