本科学研究費による研究成果はつぎの3研究から成っている。 (1) アルデヒド類の不斉シリルシアノ化反応であり、芳香族およびαβ不飽和アルデヒドとシリルシアニドとの触媒反応において90%以上の光学純度で生成物であるシアノヒドリンを得ることに成功した。 (2) キラルなシッフ塩基の金属錯体の新しい不斉触媒反応への発展を意図したものであった。ジケテンとアルデヒド類との反応による5-ヒドロキシ-3-ケトエステル合成への応用である。光学活性生成物はコレステロール低下剤としての医薬品の原料となることから注目された。詳しい研究の結果、キラルなシッフ塩基20モル%の使用で、チタン化合物を触媒として化学収率80%以上、不斉収率90%以上で生成物を得ることができた。 (3) 3番目の研究は以前から続けている対称化合物の不斉非対称化反応の発展として、キラルなシッフ塩基がシスエポキシドの不斉開環アリール化に有効な触媒となることを半年の幅広い研究の結果大発見した。この発見は世界で初めての90%以上の光学活性トランス-2-アリールアルコールを与える高度な不斉触媒アリール化である。生成物を用いるジアステレオ選択不斉反応による医薬品その他の有機合成がすでに知られている。
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