各種光、電子材料への応用を目的として、芳香族ニトロ化合物を出発原料として新規骨格をもったポルフィリンの合成をおこなった。芳香族ニトロ化合物とイソニトリルとの反応を利用して、芳香環とピロールとが縮環したイソインドールの合成を検討した。多環芳香族ニトロ化合物、複素芳香族ニトロ化合物など多彩な化合物がこの反応に利用出来ることがわかった。しかし、ニトロ化合物の種類によってピロールが生成せず、ピリミジンが生成する場合もあった。この問題を解決するために、使用する塩基の効果を詳細に検討し、非イオン性の強塩基を利用することにより、ピロールのみが得られる条件を確立した。このようにして合成したピロールは、さらにポルフィリンへ変換し、その性質を研究した。これらポルフィリンの吸収スペクトルは、通常のポルフィリン(例えばTPP、テトラフェニルポルフィリン)に比較し、長波長に大きくシフトした。この長波長シフトは、縮環した芳香環の種類により変化した。本研究の成果は、ポルフィリンの電子状態を制御する方法として、芳香族ニトロ化合物を利用したピロール合成が有効な方法を提供することを見い出したことが挙げられる。
|