本研究目的は金属ポルフィリンを軸配位子としてもった各種形状の金属ポルフィリンオリゴマーやポリマーの系統的合成、ならびにこれらの錯体の構造、電子状態、反応性、特に分子内ポルフィリン環の相互作用の解明にある。 以下に本年度(平成8年度)の研究実績の要点を示す。 1.新しい環状四量体、オブリーク型四量体や対面型二量体を含む種々の新規ポルフィリンオリゴマーの合成を行い、それらの特定を行った。 2.環状型四量体、オブリーク型四量体の種々の条件下における電子スペクトルおよび電気化学の測定によって、これらのオリゴマーの構成ポルフィリンサブユニット間には分子内相互作用が存在することを明らかにした。さらに、これらの四量体を構成しているポルフィリンサブユニットの面間距離(約8〜10†)と比較して、より短いサブユニットポルフィリン面間距離(約2.9†)をもった対面型二量体は、より大きな分子内相互作用を示すことも明らかにした。これらの結果は、分子内相互作用にとってポルフィリンサブユニットの面と面との距離が極めて重要であることを示している。 本研究の基盤となった、一つのポルフィリンを軸配位子としてもったルテニウムポルフィリン二量体、いわゆるT型の二量体の単結晶X線構造解析にも成功した。
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