研究概要 |
昨年度報告したLa_2NiO_<4+δ>およびLa_2CuO_<4+δ>結晶は(LaMO_3)_nLaO_<1+δ>;M=Ni,Cuで表現される一連の物質のうちn=1に対応する。(LaMO_3)_nLaO_<1+δ>はn層のペロブスカイト構造をもつ層とLaO層からなり,不定比酸素はLaO層にあるものと考えられている。本年度はM=Ni系についてn=1(δ=0.067,0.073および0.150),n=2(δ=0.05),n=∞結晶の10〜400Kにおける熱容量測定を行った。 1.n=1系では,δ=0.067において250Kに鋭い熱容量ピーク,255Kにショルダー,150〜260Kに広い温度範囲のガラス転移を,δ=0.073では250Kに鋭い熱容量,270Kにショルダー,150〜270Kにガラス転移を見いだした。昨年度報告した結果と合わせて,この組成域に過剰酸素配置に関する共析または包析現象が250Kに存在するものと理解された。 δ=0.150結晶では290Kに鋭いピーク,340Kにショルダーが見いだされ,昨年度のδ=0.140と合わせて,別の共析または包析現象の存在の可能性を示した。 以上のように,(LaMO_3)_nLaO_<1+δ>結晶では過剰酸素は一定の組成で安定な化合物を形成するとともに,一般の相関係に見いだされるような共析または包析現象を示すことを明らかにした。 2.n=2系,δ=0.05においては,熱容量に異常は見いだされなかった。LaNiO_3層が2層入ることにより層間相互作用が減少したためとも考えられるが,より大きなδの解明が必要である。 3.n=∞のLaNiO_<2.94>結晶では,酸素欠陥の秩序化およびその凍結に基づく異常は見いだされなかった。10〜20Kに小さなハンプが見いだされたが,これはNi^<3+>のスピンの秩序化に関係したものと解釈される。
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