研究概要 |
1)アミノポリカルボン酸無水物によるメトミオグロビンの修飾と分離・精製-ジエチレントリアミン五酢酸イオンを蛋白質表面のリジン残基に共有結合させた化学修飾メトミオグロビン(metMbDTPA)を調製し,高速液体クロマトグラフィーにより分離・精製した。metMbDTPAは4つの主成分からなり,それぞれ1個のDTPAが異なるリジン残基に結合していることがわかった。さらに結合位置の特定のためリシルエンドペプチダーゼによる酵素消化を行い,各ペプチド断片のアミノ酸配列の決定を進めている。2)アミノポリカルボン酸で修飾したミオグロビンと種々の金属イオンとの錯形成反応および電子スピン共鳴法による金属イオン結合部位の決定-metMbDTPAのDTPA部分とCu(II),Co(II)との錯形成をESRスペクトルから検討し,それぞれ,metMb{Cu^<II>(dtpa)}とmetMb{Co^<II>(dtpa)}を生成することがわかった。3)Co(III)DTPA錯体が共有結合したメトミオグロビンの調製とその酸化還元挙動-metMb{Co^<II>(dtpa)}をK_3[Fe(CN)_6]で酸化し,metMb{Co^<III>(dtpa)}を調製した。組成は原子吸光分析およびサイクリックボルタンメトリーにより決定した。また,メチルビオローゲンラジカルカチオンによる還元反応によって生成したdeoxyMb{Co^<III>(dtpa)}の複合体内電子移動反応を検討し,{Co^<III>(dtpa)}の修飾位置の違いにより反応速度が異なることを見出した。今後,結合位置の決定により電子移動反応経路と速度との関係を明らかにして行く予定である。4)ビオローゲンやキノリニウムを結合させたN-アルキルポルフィリンおよびその金属錯体の合成と蛍光挙動-ビオローゲンやキノリンを面上から結合させたN-アルキルポルフィリン二元錯体を合成し,その蛍光挙動を検討した。キノリンからポルフィリンへのエネルギー移動の後,ポルフィリンからキノリンへの電子移動消光反応,さらに,ポルフィリンからキノリンの励起一重項状態への電子移動消光も起こることがわかった。蛍光性分子がポルフィリンに対して垂直配向をとる場合にはエネルギー移動・電子移動反応速度が共に遅くなることがわかった。
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