研究概要 |
1.ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)パラジウム(II)および白金(II),M(hfac)_21に対しCH_2Cl_2中で18-crown-6を加えて有機溶媒に可溶とした無機塩、[K]X([]=18-crown-6,X=Cl,Br,I,NO_2,NO_3etc)を反応させると、5-配位錯体[K][M(hfac)_2X]2,[K][M(hfac)(X)_2]3と反応が進み、さらに配位圏外に追い出されたhfacがカルバニオンとして金属を攻撃して、[K][M(hfac)(hfac-C^3)X]4を生成することを見い出した。各錯体は単離されるが、特に5-配位白金錯体2は、X=Cl,Br,IについてX-線結晶解析することにより四角錐型構造をとっていることが明らかとなった。この錯体は溶液中でapical位置のhfac-Oが、basalにあるX-transのhfac-Oと交換する動き(横揺れ)とX-cisのhfac-Oと交換する働き(縦揺れ)とを同時に起こしていることがDynamic-NMRによりわかった。縦揺れ速度はXの種類にあまり依存しないのに対し横揺れ速度はX;I>Br>Clの順に小さく、これはX-線分子構造のPt-O(X-trans)結合距離がX;I>Br>Clの順であることに対応しており、ハライドイオンのトランス-効果を5-配位中間体のレベルで明らかにした点で平面4配位d^8-遷移金属錯体の配位子置換反応や配位子交換反応のモデルとして大きな意義を持つ。 2.錯体1とオキシム類との反応を詳細に調べた結果、hfacが真ん中の炭素でPd(II)に結合し、このhfacのカルボニル炭素の1つにオキシムの酸素原子が結合した珍しい錯体、[Pd(hfac)(hfac-oxime-C,N)]を単離してX-線結晶解析を行った。この錯体の生成機構について現在検討中である。 以上金属-炭素結合生成に至るまでの反応機構について、研究上の発展が見られたので報告します。
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