研究概要 |
1.クラウンエーテルを添加することで有機溶媒に可溶化した無機塩や[Ph_4P]塩と、[M(hfac)_2](M=Pt,Pd)とを反応させ、無機イオン(X)が順次hfac-キレートを置換してゆく過程を調べた。反応は、5配位錯体[MX(hfac)_2]^-、hfac-O単座配位錯体[M(X)(hfac)(hfac-O)]^-、[MX_2(hfac)]^-と続く。ここで経路は2つに分れ、Xの配位力が強ければ[MX_4]^<2->などへ、弱ければ溶液中のhfac^-イオンの再攻撃を受け、hfacが真ん中の炭素で金属に結合した{MX(hfac)(hfac-C^3)]^-となる。このM-C結合生成の遷移状態は、中性のドナー分子との反応系に比べ、錯アニオン[MX_2(hfac)]^-にhfacアニオンが結合するという、静電的・エントロピー的に不利な状態であることがわかった。5配位錯体[PtX(hfac)_2]^-(X=Cl,Br,I)の[Ph_4P]塩は、低温でのX-線結晶解析から、Xが四角形の一隅を占める、歪んだ四角錐型構造であった。溶液中でもこの構造は保たれるが、同時に起こっている2種類の分子内運動を温度変化NMRを使って解析した。この2つの運動速度の比はXにより異なる。apical-OのX-trans-O置換速度はI>Br>Clの順であるのに、cis-O置換速度は逆であった。配位子交換に伴うcis-trans異性化速度はCl>Br>Iの順と予測された。 2.モノオキシムと[M(hfac)_2]などとの反応を詳細に調べた。Pd(II)ではオキシム-OとC^3-hfacのCOとが結合した、C,N-キレート錯体ができた。X-線結晶解析とNMRで構造決定した。さらにこのM-C結合生成の前駆体[Pd(hfac)(oxime)_2](hfac)を検出した。またC,N-キレート内のオキシムが容易に別のオキシムに交換することを見いだした。Pt(II)系や、配位性置換基をもつオキシムとの反応ではM-C結合はできなかった。 3.Pt(acac)_2]とPPh_3との反応で、初めてのacac(3-)錯体ができ、多核NMRでこの複核構造を推定した。いったん外圏にでたacac^-によるH^+引き抜きがキ-ステップで、1の場合同様イオン機構でM-C結合ができたと考えられる。
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