研究概要 |
[Co(ma or mp)(tren)]^+には2種の幾何異性体(p-およびt-isomer)がある。 (ここでma:mercaptoacetate,mp:β-mercaptopropionate,tren:tris(2-aminoethyl)amineである。)p-isomerは熱的に不安定で、通常の合成法では生成量が少なく単離は難しい。t-[Co(ma or mp)(tren)]^+に高圧水銀燈で光照射すると、Co-C結合を有する錯体は得られず、主に[(tren)Co-O_2yμ-OH)Co(tren)]^<3+>が生成する。しかし、短波長の光をカットしながら水銀キセノンランプで光盟射すると、熱的に不安定なp-isomerが生成する。この光異性化反応によりp-isomerを合成した。p-isomerからt-isomerへは等吸収点を保ちながら異性化する。mp錯体の場合、この熱異性化反応の速度を測定した。k=11.91x10^<-5>s^<-1>,△H^+=71.76kJmol^<-1>,△S^+=-22.48JK^<-1>mol^<-1>(T=323K)[Co(aet)(Xtren)]^<2+>(aet:aminoethanethiolate)にも2種の幾何異性体(p-およびt-isomer)があり、熱的にはp.isomerが安定である。光異性化反応で熱的に不安定なt-isomerが得られ、熱反応で安定なp-isomerにもどる。この熱異性化反応の速度定数はk=9.17x10^<-5>s^<-1> (pH=9.97,T=323K)である。 [(edda)Co(μ-OH)_2Co(en)_2]^<2+>(edda:ethylenediaminediacetate)は暗所に放置しても吸収スペクトルの変化は起きないが、光照射によりμ-OHに起因する300nm付近の吸収が消滅し、架橋OHの開裂が起こる。この光反応にはμ-OHの電荷移動吸収帯領域の光の照射が有効であった。光学活性な出発錯体を用いてこの光開裂反応を行っても、生成する単核錯体はラセミ化している。
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