アミノカルボン酸やチオカルボン酸の配位したコバルト(III)錯体の光脱炭酸反応により、Co-C結合をもつコバルト(III)錯体を合成単離した。これらの錯体の構造、性質はX線構造解析、UV、CD、^<13>C-NMRスペクトル等により調べた。 1. 6員環キレート、5員環キレートを形成するアミノカルボン酸の錯体の光脱炭酸反応により、Co-C結合を有する3員環キレート、4員環キレート錯体が得られる。4員環キレート錯体の場合、共存配位子はenのようなアミンでも単離できるが、より歪みの大きい3員環キレート錯体では、phenやtmpa(tris(2-pyridylmethyl)amine)のような不飽和な配位子が共存する場合にのみ単離できた。 2. 6員環キレート、5員環キレートを形成するチオカルボン酸(R-S-(CH_2)-COO)の錯体の光脱炭酸反応では、Co-CH_2-S3員環キレート錯体は単離されたが、類似の4員環キレート錯体は全く生成しない。キレートサイズの違いによって反応性が全く異なる。 3. Co-CH_2-Nおよび、Co-CH_2-S3員環キレートを有する錯体は、水溶液中では異性体の平衡混合物として存在していると推定される。((1)生成物は1種の異性体しか得られない。(2)^<13>C-NMRスペクトルにおいてシグナルは対称性から期待される本数とはならず、重なったシグナルとなる。(3)自然分晶した錯体の場合、溶液中ではCDスペクトルを示さない。(4)光学活性塩を溶かした溶液中でPfeiffer effectによる誘起CDスペクトルが観測される。) 4.Co-C結合を有する[Co(eedmp)(phen or bpy)]^+のα体とβ体の間の異性化反応を調べた。可逆反応で平衡は大きくα体側に片寄っている。bpy錯体の異性化速度はphen錯体の速度より1桁速い。
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