研究概要 |
平成8年度には(1)一連のBETS(=bis(ethylenedithio)tetraselenafulvalene)混合ハロゲン化ガリウム塩λ-(BETS)2GaCl4-xYx(0<x<4; Y=F,Cl,Br)は,アニオンサイズを小さくしていくと加圧した場合と同様な変化を一気圧下で再現し一連の超伝導体を与える。(2)λ-(BETS)2GaCl_<2.5>Br_<1.5>は常圧下において絶縁体であるが、加圧することによって超伝導が出現する。この物質は超伝導相近くに位置する絶縁相と考えられるが、同様に超伝導相に隣接するTMTSF塩、κ-(BEDT-TTF)_2Cu[N(CN)_2]Cl等とは異なり、磁化率の測定からこの物質の低温相は非磁性である可能性があることを明らかにした。理論的にこの物質はスピンギャプ相と反強磁性相との境界にある可能性が指摘されており、低温相の基底状態に興味がもたれている。本年はこの非磁性相について、更に検討をおこなった。^1H-NMRの測定から低温で2nd moment(線幅に対応)がわずかに増大したが、局在スピン系と考えられるようなκ-(BEDT-TTF)_2 Cu[N(CN)_2]Clの2nd momentような顕著な増加は観測されなかった。また25K-2Kの温度範囲で、磁気秩序の形成時に特徴的な1/T_1の発散はみられなかった。従ってこの相は反強磁性相ではなく非磁性相であると結論される。 λ-(BETS)_2GaBr_4はλ-(BETS)_2GaCl_4と類似の4倍周期構造をとるが伝導度は50Kまでnarrow-gap半導体的な振る舞いをし、50Kで絶縁体に転移することが明らかになった。磁化率は約60Kで反強磁性に転移した。このように高い反強磁性転移をする有機物は珍しく、交換相互作用が大きいことを示しており酸化物超伝導との関連からも興味深い。
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