研究概要 |
(1)有機ラジカル強磁性体 ArCH=N-TEMPO(ここでArは種々のAryl基)で表される165種類のTEMPOラジカル誘導体の磁気的性質をSQUIDで調べた結果、52種類で分子間強磁性的相互作用をみつけた。有機ラジカルにおける分子間強磁性的相互作用は珍しい現象でないことがわかった。その中で8種類は0.4K以下で強磁性体に転移した。TEMPO系の強磁性的相互作用はβ水素を介したスピン分極メカニズムに起因することを提案し、これはMO計算、NMR測定から確かめられた。μSR実験からも、ゼロ磁場で自発磁化が発生することを見い出した。転移温度を高めるために、π共役NOラジカルヘと研究を進めた。アクリジン骨格を有する系では、π電子雲の重なりを通したMcConellモデルで強磁性的相互作用を説明できた。 (2)ピリミジン・遷移金属錯体の磁性 芳香族環のメタ位に配位した遷移金属イオンのスピン間の相互作用を調べるため、各種遷移金属イオン・ピリミジン錯体の磁性を調べた。その結果、遷移金属の配位位置(メタ配位)よりも、むしろ配位形態が磁気的相互作用を決定することがわかった。Cu_<2+>イオンでは、axial/equatorial配位は強磁性的相互作用を与え、equatorial/equatorial配位は反強磁性的相互作用を与えた。錯体のアニオン部に立体障害の小さい無機アニオンを用いると、弱強磁性体のふるまいを示す系をいくつか見つけた。(ピリミジン)_2・CoX_2(X=Cl,Br)はキラルな結晶構造と弱強磁性体のふるまいを示した。
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