研究概要 |
層状化合物において層の両端を結合させればチューブ状の結晶となる。このようなチューブ状結晶を開発するため、格子不整合を有する化合物(RS)_×(TS_2)_n (R:希土類金属、T:Ti,V,Cr,Nb,Ta,n:1,2)及びグラファイト類似の2次元骨格を持つRB_2C_2, RB_2Cを用いてチューブ状結晶の成長を行った。前年度に引き続きチューブ状結晶成長をさせ、現在までに前者の化合物において、計約20種類のマイクロチューブ状結晶を得た。このチューブ結晶の成長はRSとTS_2の2種の副格子が互いに格子不整合になる方向に、積層による格子ひずみを解放するために湾曲した結果であると考えられる。得られた結晶についてイメージングプレートを用いたX線回折装置を用いてチューブの成長方位を測定した。この結果、チューブ状結晶は層状の両端が繋がっていない渦巻き状に成長していること、チューブの湾曲方向は格子不整合方向に近いこと、またチューブ結晶の成長方位は格子の整合方向に近いが僅かにずれていることがわかった。このことは想定していたように層状の薄膜が格子不整合のため不整合方向に湾曲して渦巻き状に成長し、かつ格子の整合方向(結晶格子のb軸)を軸とした、らせん状に結晶成長していることを示す。このらせん角は0度から7度まで化合物に依存している。しかしながらこのらせん角は格子不整合の度合いと相関はみられず別の結晶成長メカニズムが作用していると考えられる。
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