研究概要 |
1.新規フェルダジルラジカル結晶20種を合成し、その磁性の研究を行った。その中で6種が分子間に強磁性的相互作用(2J>0)を示すことが明らかになつた。また、Jの正負に関わらず、これらのラジカルは一般的に一次元Heisenbergモデルで説明できる磁性を示した。INDO計算を行った結果、CH_3O基を除く、CH_3,H,Cl,CN,NO_2基などの置換基を有するフェルダジルにおいては、分子間の電荷移動により強磁性的相互作用が可能な電子構造を示した。 2,3-(4-Chlorophenyl)-1,5-dimethyl-6-thioxoverdazyl(p-CDTV),3-(4-Methylphenyl)-1,5-diphenyl-6-oxoverdazyl(p-MeDpOV)はいずれもT_C=0.67KのCurie転移温度を示す有機強磁性体であることが、低温での磁場下における比熱、交流磁化率の測定により明らかにされた。T_C=0.67Kはこれまでに報告されている中で、有機ラジカル結晶として2番目に高い強磁性Curie温度である。また、p-CDTVの場合は加圧下における比熱と交流磁化率の測定により強磁性発現の機構に関する議論を行った。 3,1,3,5-Triphenyl-6-oxoverdazyl(TOV)と3(4-Cyanophenyl)-1,5-diphenyl-6-thioxoverdazyl(p-CyDpTV)ラジカル結晶が、それぞれ、T_N=5.4KとT_N=0.42Kの転移温度を示す有機弱強磁性体であることを、SQUID、交流磁化率、比熱などの測定により明らかにした。p-CyDpTVの場合は自発磁化(M_S)の温度依存性を求め、この温度変化が臨界指数β=0.36で説明できることを確かめた。弱強磁性体におけるこの様な詳細な解析はこれまでに行われておらず、これが初めての例である。また、有機弱強磁性体の例はこれまでに5種しか報告されておらず、弱強磁性発現の機構も明らかにされていないため、今後単結晶を用いた研究が是非とも必要である。
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