研究概要 |
最近、糖質を含む生物活性物資が次々に単離、構造決定され、その顕著な生理活性が注目を集めている。これらの化合物の多くは糖とアグリコン部分が酸素原子を介して結合しているいわゆるグリコシドとして存在しており、その化学合成の手段としては糖とアグリコン部分を直接結合させるいわゆるグリコシル化反応が一般的であり、これを効率的に実現するための手法を開発することが鍵を握る大切な課題とされている。特に、糖の1位の不斉炭素に由来する二つのジアステレオマ-(1,2-トランス体と1,2-シス体)の選択的合成、すなわち、望みのジアステレオマ-を高立体選択的に作り分けることのできるグリコシル化反応の開発が強く望まれている。 本研究ではまず触媒量のルイス酸を用いて1位に特に脱離基を持たない遊離のリボースを用いる立体選択的グリコシル化反応を見い出し、引き続きこの反応をピラノース類のグルコシル化反応に適用することにより、遊離のガラクトースあるいは2-デオキシグルコースと遊離のアルコールから一挙にグリコシルドを得ることのできる新しい手法を確立することができた。 1-アミノフラノシド類はヌクレオシドとして知られ、DNA、RNAの構成単位として重要な化合物であり、そのα体およびβ体の立体選択的合成は糖質化学における最重要課題の一つである。本研究ではこの課題にも取り組み、炭素3位上の酸素官能基としてチオカルバモイル基を有する2-デオキシリボース誘導体と核酸塩基とのグリコシル化反応をルイス酸触媒の存在下で行うことにより、高い立体選択性をもってβ-リボヌクレオシドを与える優れた手法を見い出すことができた。さらに、炭素5位上の酸素官能基としてチオカルバモイル基を導入することによって、高い立体選択性でα-リボヌクレオシドを得る手法を併せて開発することができた。
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