イオン反応をプローブとして、構造次元の異なる様々の高分子イオンの反応における反応場特性を明らかにすることが本研究の目的である。平衡論的アプローチと速度論的アプローチにより得られた結果を総合的に判断して界面反応の微視的知見を得る。 平衡論的アプローチによる結果 1)ポリアクリル酸の金属錯体の溶液内錯平衡を電位差滴定法およびNMR法により調べた。支持塩濃度およびpH変化に伴う単座配位錯体および2座配位錯体の分布変化から本質的錯平衡を抽出した。また、2座配位錯体生成平衡が高分子イオンの溶液内有効体積と直接関係づけられることを明らかにした。 2)ポリビニルイミダゾールの共役酸の酸解離平衡を精密滴定カロリメトリー法で調べた。酸解離に伴うエンタルピー変化を決定したところ、その値は支持陰イオンの性質に大きく依存することを見出した。塩化物イオンと骨格上のイミダゾリウム基との直接的相互作用が示唆された。 速度論的アプローチによる結果 1)ポリスチレンスルホン酸イオン添加によるFe^<2+>/[Co(NH_3)_5Cl]^<2+>の酸化環元反応の触媒作用の定量化を行った。高分子イオン骨格近傍にバルク相とは異なる溶媒相を仮定し、その体積を規定することにより、反応加速因子を合理的に説明した。 2)長鎖状ポリリン酸イオン添加による上記反応の触媒作用の解析を行った。Fe^<2+>イオンとリン酸基との直接配位による錯生成を考慮することにより反応加速因子を解釈した。
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