研究概要 |
我々が合成した8個の臭素原子をもつ水溶性ポルフィリン(5,10,15,20-tetrakis(2,3,7,8,12,13,17,18-octabromo4-sulufonattophenyl)porphyrin(H2obtpps4-),(Bull.Chem.Soc.Jpn,(1996))はリチウムと反応することが分かった。これは、アルカリ金属イオンは"かたい"酸であるので"かたい"塩基である酸素原子を含む配位子と強く結合するという、今までの常識を打ち破るものである。しかも、0.1MのNa^+やK^+は全く反応しなかった。その主な原因は、(1)8個の臭素原子の電気吸引性によってポルフィリンの塩基性が減少し、通常では解離しないピロールのプロトンがpH10で解離する(pKa=10.06)、(2)8個臭素原子の導入によって臭素原子間の反発によりポルフィリン環が歪み、リチュウムイオンとポルフィリンの反応が速くなった、(3)リチュウムイオン半径(70pm)は亜鉛イオンの半径(72pm)とほぼ同じであり、ポルフィリン環の中に挿入するのに最適なイオン半径である。ナトリウムイオンは1M濃度でも反応しないのでリチュウムイオンの選択的吸光光度定量法を確立した。さらに、Li^+ポルフィリン錯体はテトラブチルアンモニウムとイオン対を形成してクロロホルムに抽出されることを見いだしたので、Liポルフィリン錯体のイオン対抽出機構について研究した。その結果、イオン対はクロロホルム中で解離していることが分かった。この分析法を血清や海水中のLi^+の定量法に応用した。更に、水-アセトニトリルの混合溶液からLiポルフィリン錯体はテトラブチルアンモニウムがなくても抽出されることが明らかとなった。これらの成果は論文として発表した。
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