種子散布によってもたらされる適合度をいくつかの散布モードを持つ樹種について評価することに成功した。 1) 風散布種子をもつ樹種 風散布樹種数種について、その散布パターンのメカニスティックなモデルを作成し、その適応的意義を論じるとともに、散布距離および種子生産数とセーフサイトの頻度との関係を解析した。セーフサイト頻度の低い種ほど、遠くに多量の種子を散布させてそれを補完する。 2) 動物散布種子をもつ樹種 鳥散布種子をもつハリギリについて、種子の休眠と鳥によるパルプ除去の影響を明らかにした。鳥によって種子外部のパルプを取り除かれた種子は遠くに運ばれて速やかに発芽するが(空間的散布)、パルプを消化されなかった種子は休眠に入り徐々に発芽する(時間的散布)。また、ほ乳類によって散布されるトチノキでは、いわゆる方向性散布の検証を行った結果、齧歯類によって種子の到達範囲は広がるものの、方向性については否定された。 3) 散布に関する理論的研究 種子散布に対する資源配分について進化的に安定な戦略が理論的に導かれた。
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