研究概要 |
1 サンプルの採集:マレーシアサラワク州ランビル国立公園,ムル国立公園,マレー半島バハン州において、アリ植物である(体内にアリとカイガラムシをすまわせている)オオバギ11種の個体毎に,植物体,アリ,カイガラムシを主に採集した.また,非アリ植物である(体内にアリをすまわせていない)オオバギ6種については,植物体のみを採集した.この調査により,ボルネオ島のみならずマレー半島部においても,アリとアリ植物の間に同様の種特異的な共生関係が認められることが判明した. 2 分子系統樹の作成:まずアリについては,ミトコンドリアDNAのチトクロームオキシダーゼI遺伝子上にプライマーを設定し,約480bpの部分の塩基配列を9種のオオバギに共生していたシリアゲアリ,および外群の2種のシリアゲアリについて決定した.オオバギの形態による系統樹(Davies,1996)とアリの分子系統樹を予備的に比較したところ,かなりの部分で一致がみられ,この2者が共種分化してきたことが示唆された.しかし,不一致の部分もあり,植物側の系統樹の精密化が望まれる.これと関連して,ハーバード大学のStuart Davies氏と共同で植物側の分子系統樹の作成に取り組むことになった.植物に共生しているカイガラムシについてはミトコンドリア DNA のチトクロームオキシダーゼII遺伝子上にプライマーを設定し,約300bpの塩基配列を3種のオオバギに共生していたヒラタカタカイガラムシ亜属,および外群の2種のカタカイガラムシについて決定した。
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