研究概要 |
カフェイン生合成の主要経路は、現在、プリンヌクレオチド(PN)から生じたキサントシンが7-メチルキサントシン、7-メチルキサンチン、テオブロミン(3,7-ジメチルキサンチン)を経てカフェイン(1,3,7-トリメチルキサンチン)生成される経路である。植物細胞内のPNのプールからプリンアルカロイドが合成される可能性が考えられているが、植物のPNの正味の合成は、PNのde novo合成経路により行われる。この研究では、PNのde novo生合成経路の中間産物(IMP)が直接カフェイン生合成につかわれるかを調べるため、チャ葉に[^<15>N]グリシンと、[2^<-14>C]5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミドリボヌクレオシド(AICAR)を投与し、その代謝を検討し、PNのde novo経路のカフェイン生合成への関与を推定した。これらの標識化合物は、テオブロミン、カフェインへにとりこまれ、これは、PN生合成の阻害剤で抑えられた。テオブロミンの標識は、時間に伴い、カフェインに移ることが示され、PNのde novo経路から生じたIMPからテオブロミンを経由してカフェインが合成されることが示唆された。本研究では、さらに、チャ葉からカフェイン生合成に関与するメチル基転移酵素(NMT)を単離した。硫酸アンモニウムによる塩析、ハイドロキシアパタイト、陰イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ゲル濾過により524倍に精製した酵素標品のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動による推定分子量は41,000,ゲル濾過による推定分子量は61,000であった。本酵素は、キサンチンの1,3,7位のN原子にメチル基を転移できるがその反応速度はN3>N1>N7の順であった。その他、S-アデノシルメチオニンの供給に関しても検討をおこない、プリンアルカロイド生合成の調節機能を考察した。
|