研究概要 |
高等植物細胞の形や伸長方向は細胞壁,特にセルロース微繊維の配向により決定されると考えられている。このセルロース微繊維の配向はどのような機構によって決まるのかは植物の形態形成や細胞分裂の機構を理解するうえで最も重要な課題の一つである。1963年LedbetterとPorterにより細胞表層微小管と細胞壁セルロース微繊維の配向が常に一致することが報告されてから微小管がセルロース微繊維の配向をコントロールしているのではないかと考えられるようになった。その後、多くの観察によりこれは認められることになった。また、ターミナルコンプレックスに発見により微小管とセルロース微繊維の関係を分子レベルで理解しようとする試みもなされてきた。そして多くのモデルが提出されたが、実際分子レベルでその機構を証明するという試みはいまだに成功しなかった。それは、セルロース合成酵素複合体が同定されていなかったことがその理由であった。私は種々の高等植物細胞からチューブリンが主構成成分と思われるセルロース合成酵素複合体粒子を単離することに成功し、その構成分子の構造・性質・機能の解析を行ってきた。このセルロース合成酵素複合体はチューブリンのほか33、42、120kDタンパクなどから構成されていることが明らかになった。33kDタンパクについてはその特異的抗体を用いて金コロイドによる免疫電顕を行うと粒子がラベルされ、さらにセルロース合成も完全に阻害された。また基質であるUDP-グルコースの^<32>Pラベルが33kDタンパクと結合することよりこのタンパクがセルロース合成酵素複合体の中で重要な機能を果たしていることが示唆された。遺伝子のクローニングを行いシークエンスを決定したところ類似タンパクはシロイヌナズナなどにも機能未知の膜タンパクとして存在は知られていることがわかった。33kDタンパクについては特許出願中である。42、120kDタンパクについても進行中である。
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