研究課題/領域番号 |
08454258
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
林 秀則 愛媛大学, 理学部, 教授 (60124682)
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研究分担者 |
大政 謙次 国立環境研究所, 生物圏環境部, 室長 (70109908)
森田 勇人 愛媛大学, 理学部, 助手 (50274303)
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キーワード | 塩耐性 / 低温耐性 / 形質転換植物 / コリンオキシダーゼ / グリシンベタイン / 遺伝子組替え |
研究概要 |
適合溶質の一つであるグリシンベタインの合成に関与する酵素、コリンオキシダーゼの遺伝子を放線菌、Arthrobacter globiformisから単離し、シロイヌナズナに導入した。得られた形質転換体では発現したコリンオキシダーゼの大部分が葉緑体に局在し、また生葉1gあたり1μmoleのベタインの蓄積が確認された。得られた形質転換体は100mMのNaClを含む培地上で発芽し、速度は遅いものの生育を続けた。また通常の栄養塩で水耕によって生育された後200mM NaClを含む溶液に移した場合、野生株は数日後に枯死したが、形質転換体は生存を続けた。また400mM NaClを含む溶液で処理した場合、48時間後に光化学系II活性が野生株では10%以下に減少したのに対し、形質転換体では50%以上活性が残っていた。このようにコリンオキシダーゼ遺伝子の導入により、植物体としての塩ストレス耐性が改善のみならず、光合成の塩ストレスに対する耐性も増大することが明らかとなった。 低温環境(5℃)おける発芽と生長は野生株よりもグリシンベタインを蓄積した形質転換体の方が速かった。また通常の条件下で約1ヶ月生長した植物を2日間で低温(5℃)明条件で処理した後、通常の温度に戻した場合、野生株では葉の傷害が顕著になったのに対し、形質転換株ではほとんど傷害が見られず、また低温、明条件下において低下した光合成活性は、形質転換体の方が野生株より常温において早く回復した。この結果はグリシンベタインを蓄積した形質転換体では低温におけるD1タンパク質の再生速度が野生株より速く、光阻害からの回復が起こるものと考えられる。即ち、植物の塩耐性に必要とされる適合溶質の一つであるグリシンベタインが、低温下における光合成の活性保持、恒常性の維持に何らかの役割を果たしていると考えられる。
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