コリンオキシダーゼ遺伝子を導入した形質転換植物におけるストレス応答の解析

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08454258
• 研究機関: 愛媛大学
• 研究代表者: 林 秀則 愛媛大学, 理学部, 教授 (60124682)
• 研究分担者: 大政 謙次 国立環境研究所, 生物圏環境部, 室長 (70109908) ; 森田 勇人 愛媛大学, 理学部, 助手 (50274303)
• キーワード: 塩耐性 / 低温耐性 / 適合溶質形 / グリシンベタイン / コリンオキシダーゼ / 遺伝子組換え / シロイヌナズナ / 形質転換植物

研究概要

グリシンベタインは適合溶質の一つであり、浸透圧調節の他にも、タンパク質の変性の抑制に効果がある。コリンオキシダーゼはコリンから、一段階の反応でグリシンベタインを生成する酵素である。この遺伝子をシロイヌナズナに導入して得られた形質転換体は塩ストレスのない条件下でグリシンベタインを蓄積し、野生株よりも塩耐性が増大していた。本年度の研究計画では、1.グリシンベタインを蓄積する形質転換体における低温ストレス耐性の解析、2.細胞内のグリシンベタイン合成酵素の局在性の違いによる塩ストレス耐性への効果についての解析を行った。購入した紫外可視分光光度計は、グリシンベタインおよび光合成活性測定の際のクロロフィル定量に使用した。
形質転換体は吸水時の低温ストレスに対し、発芽、生長とも野生株に比べ、耐性を示した。また、種子を低温ストレス下で発芽させた場合も、形質転換体の種子の方が野生株の種子より早く発芽し、発芽後の成長も速かった。形質転換体の種子にはグリシンベタインが含まれており、種子におけるグリシンベタインの蓄積が吸水時および発芽時の低温耐性を増大させていることが明らかになった。また、グリシンベタインの合成酵素が細胞質局在型の形質転換体では、塩ストレス下での発芽においては、野生株に比べ発芽率は高かった。しかし、塩ストレス下での生長においては、野生株と差はなく、塩耐性効果はみられなかった。昨年度解析したグリシンベタイン合成酵素が葉緑体局在型の形質転換体では塩ストレス下において、野生株より生育が速く、塩耐性効果が見られた。よって、生長時の塩ストレス耐性についてはグリシンベタイン合成酵素が葉緑体に存在することに重要な意味があると考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Alia: "Transformation with a gene for choline oxidase enhances the cold tolerance of arabidopsis during germination and early growth." Plant Cell Environ.(in press). (1998)
• [文献書誌] Nishiyama,Y: "Thermal Protection of the oxygen-evolving machinery by PsbU, and extrinsic protein of photosystem II in Synechococus sp.PCC 7002." Plant Physiol.(in press). (1998)
• [文献書誌] Hayashi,H.: "Transformation of Arabidopsis thaliana with the codA gene for choline oxidase;accumulation of glycinebetaine and enhanced tolerance to salt and cold stress" The Plant Journal. 12. 133-142 (1997)
• [文献書誌] Lee,C.B.: "Stabilization by glycinebetaine of photosynthetic oxygen evolution by thylakoid membranes from Synechococcus PCC7002" Mol.Cells. 7. 296-299 (1997)
• [文献書誌] Hayashi,H.: "Genetically engineered enhancement of salt stress in higher plants in"Stress Responses of Photosynthetic Organisms,K.Satoh and N.Murata eds."" Elsevier Science Publishers, 15(259) (1997)