研究概要 |
本研究の目的は、植物の成長調節において中心的な役割を果たしている細胞壁多糖が数万Daの中間多糖を経由して分解されるという仮説を実証することにあった。昨年度までの研究で、細胞壁構築上重要なキシログルカン及び(1→3),(1→4)-β-D-グルカンの二段階分解過程に関与する細胞壁酵素が精製された。今年度は、環境シグナルによって成長が調節される際にこれらの酵素の活性がどのように変化するかを中心に解析した。 芽ばえに光を照射すると、細胞壁が固くなり伸長成長が抑制される。この時双子葉植物ではキシログルカンの高分子化が起きており、これが細胞壁が伸びにくくなる原因となっていると考えられた。そこで、この多糖の二段階分解機構の第一段階に関与するキシログルカン分解活性を測定したところ、活性は有意に低下していた。一方、芽ばえに過重力をかけた時も、キシログルカン分解活性の低下、キシログルカンの高分子化、細胞壁伸展性の低下、成長抑制が誘導された。過重力処理したアズキ上胚軸では、アポプラストのpHが上昇し、in situにおけるキシログルカン分解の抑制に関与することがわかった。 水中、暗所で生育したイネ幼葉鞘を空気に曝すか白色光を照射すると、(1→3),(1→4)-β-D-グルカンの分解が阻害され、成長が抑制された。この時、(1→3),(1→4)-β-D-グルカンの二段階分解機構の第二段階に関与するグルカナーゼ活性が低下し、これがグルカン分解の抑制の原因となることがわかった。また、トウモロコシ芽ばえに過重力を与えた時も、幼葉鞘及び中胚軸細胞壁に含まれる(1→3),(1→4)-β-D-グルカンのレベル並びに分子量が増加し、グルカナーゼ活性が低下した。さらに、トウモロコシでも過重力処理によりアポプラストのpHが上昇し、これが活性低下に関与することが明らかになった。
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