研究概要 |
本研究の目的は、植物の成長調節において中心的な役割を果たしている細胞壁多糖が中間多糖を経由して分解されるという仮説を実証することにあった。本研究の結果、キシログルカン並びに(1→3),(1→4)-β-D-グルカンについて二段階分解過程が確認され、各過程に関与する細胞壁酵素の性質が明らかになった。また、各酵素の活性が光や重力などの環境シグナルによって調節されることも明らかにできた。 1. 粗細胞壁タンパク質画分を用いたin vitroアッセイにより、主要なマトリックス多糖であるキシログルカン並びに(1→3),(1→4)-β-D-グルカンが、分子量数万あるいは10万の中間的な大きさの産物を経由する二段階過程により分解されることが確認された。 2. アズキ上胚軸細胞壁より、キシログルカンの二段階分解過程に関与する酵素を抽出、精製した。第一段階の酵素は構造上はエンド型キシログルカン転移酵素の仲間であるが、全くあるいは特殊な条件を除いて転移活性を示さず、分子量数万単位での加水分解作用のみを示した。第二段階の分解のきっかけとなるα-フコシダーゼも精製された。 3. イネ幼葉鞘細胞壁より、(1→3),(1→4)-β-D-グルカンの二段階分解過程に関与する酵素を抽出、精製した。分解の第一段階は約20kDaのエンドグルカナーゼにより、また第二段階は約58kDaの大きさのエキソグルカナーゼによってなされる。 4. 光や重力は、キシログルカン分解酵素あるいはエキソグルカナーゼの活性を低下させて両多糖の分解を阻害し、その結果細胞壁を固くして植物の芽ばえの成長を抑制する。
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