哺乳類の雌は性成熟に達すると、その種に固有の周期で固有の数の卵を排卵する。排卵数は下垂体から分泌されるFSHの分泌量によって決定されているが、このFSHの分泌量は濾胞顆粒膜から分泌されるインヒビンにより制御されているらしい事も分かってきた。このように排卵される卵の数が一定に保たれる機構についてはかなり研究が進んでいるが、一方で多数存在する卵細胞の中から排卵にまで到達する濾胞が、どのような機構で選抜されているのかという問題については不明な点が多い。卵巣においては実際の排卵数よりもかなり多くの濾胞が、生殖腺刺激ホルモンの刺激を受けて発達を開始するけれど、その99%以上は排卵されることなく顆粒膜細胞のアポトーシスにより退化・消失する。この変性を誘導する機構を解明することにより、排卵される卵の選抜機構への理解が深まるものと考えられる。本研究の目的はマウスあるいはラットの卵巣を用いて顆粒膜細胞のアポトーシスが、どのようなホルモン環境によって誘導されるのかを解明することで排卵されない濾胞の選抜機構を明らかにすることである。まず始めに濾胞の成熱過程を組織学的に解析し基礎的データを入手するためにBrdUとコルヒチンを用いて、活発に増殖中の濾胞顆粒膜細胞の動態を解析した。この結果、マウスの濾胞は直径30-70μmの間に成熟するものと、休止状態で留まるものの選抜が行われていることが判明し、成果は論文として投稿中である。この結果をもとに、70μm以上の濾胞でアポトーシスを起こすものと、昨年われわれの研究室で行われた変性濾胞にGnRHmRNAが強く発現するという事実の相関関係を調べている。また、下垂体から分泌される生殖腺刺激ホルモンの関与についても、その受容体の動態を調べることで追求中である。
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