研究概要 |
テトラヒメナの分裂停止突然変異株cdaAは細胞質分裂面の決定因子に変異を持つ変異株でその遺伝子産物は分子量85kDa(p85)の蛋白質であることを以前に明らかにしてきた。本研究期間には、その遺伝子のクローニングとシークエンシングに成功し、予想されるアミノ酸配列からCa^<2+>/カルモデュリンとの相互作用が期待され、実際に相互作用が試験管内で証明された。更に、カルモデュリンの特異的阻害剤W7を用いると分裂面決定も、分裂溝形成も起こらないことを示した。この事によって、p85/Ca^<2+>/カルモデュリン複合体が分裂面の決定に係わり、分裂開始シグナルであることを示し得た。 分裂停止突然変異株cdaCは分裂溝の直下にある収縮環で生じた収縮力を表層に伝える、しかもアクチン繊維を束ねる構造物(アクチン繊維束化因子)に変異があることを示してきた。われわれは、アクチン束化因子として,EF-1αを見い出し、本研究年度にその束化がCa^<2+>/カルモデュリン依存的に起こることを示してきた。また、本研究年度では、F-アクチン親和カラムを用いて、別の71kDaのフィンブリン様アクチン束化因子を見い出した。この蛋白質もEF-1αも共に分裂溝に局在することが判り、これらのアクチン繊維束化因子の細胞質分裂での機能的役割が注目されている。 また、テトラヒメナで成功が報じられていなかったミオシンの精製ができた。詳しい性状の解析は未解決であるがCa^<2+>制御機構が注目される。われわれは、細胞質分裂におけるCa^<2+>制御に着目し、テトラヒメナ細胞内に3種のカルモデュリンファミリー蛋白質(カルモデュリン・TCBP-23・TCBP-25)の存在を証明し、それらの機能を調べてきた。本研究年度の研究から、TCBP-23、TCBP-25は細胞内Ca^<2+>濃度の調節に、カルモデュリンは細胞質分裂のCa^<2+>制御に係わることを強く示唆し得た。
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