研究概要 |
現存するカブトガニ類は4種のみで、東南アジア海域(ベンガル湾からインドネシア、ボルネオ、東シナ海を経て瀬戸内海まで)にカブトガニ(Tachypleus tridentatus)、ミナミカブトガニ(T.gigas)、マルオカブトガニ(Carcinoscorpius rotundicauda)の3種が分布している。これら3種のカブトガニ類はヘモシアニンサブユニットを6個持っている。これらのサブユニットの抗原性の比較及びアミノ酸配列の比較から、3種のカブトガニ類は6組のオルソロガスなヘモシアニンサブユニットを共通祖先から種分化により受け継いでいること及びそれぞれのオルソロガスなサブユニットは全く同じ抗原性を示すことが明らかになった(Sugita and Murayama,1998)。 一方、北アメリカ大陸東岸(カナダのノバスコシアからメキシコのユカタン半島まで)に生息するアメリカカブトガニ(Limulus polyphemus)は8個のヘモシアニンサブユニットを持っているが、これらとアジア産3種のカブトガニ類のヘモシアニンサブユニットとのN末端アミノ酸配列の比較から、アメリカカブトガニもアジア産カブトガニ類の6個のヘモシアニンサブユニットとそれぞれオルソロガスな関係にある6個のヘモシアニンサブユニットを持ち、その内の2サブユニットが重複した結果現在8個のサブユニットを持っていることも明らかになった(Sugita and Suzuki,1998)。 カラムクロマトグラフィとアクリルアミドゲル電気泳動法を組み合わせることによりカブトガニ類のヘモシアニンサブニットを単離精製できるようになったので、今後は、アメリカカブトガニを含めた現存4種のカブトガニ類のヘモシアニンサブユニットの全アミノ酸配列を比較することによりカブトガニ類の系統樹構築をおこなえるであろう。
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