本研究では、ベルグマンの法則の成立に関し近年発達した生命科学の手法を用い、分子・細胞のレベルで解き明かすことを目的とする。 マカク類は今まで研究を行ってきたニホンザルと、この近縁種で東南アジアに広く分布生息し、近年は医学実験用によく用いられているカニクイザルの2種を対象とした。この2種について生息地域による集団間の差異を考慮して、ニホンザルについて本州、淡路島および九州に生息する5集団(下北半島、志賀高原、伊豆半島、淡路島、高崎山)から、カニクイザルについてはタイに生息する4集団を対象とした。生身体が大きく、身体成長に時間がかかり性成熟が遅い種ほど、高濃度でIGFを分泌する傾向があった。マカクの種では、体格が大きくなるに従って血中総IGF-1濃度も全体に高い水準を示した。この近縁種間で見られた、体格が大きいほど時間当たりのIGF-1の必要量が多いという結果は、細胞の数が多いものほど生産や生命維持のための代謝に必要なホルモン量が多であろうということから容易に導き出せる推論と一致した。
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