研究課題/領域番号 |
08454279
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平井 啓久 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (10128308)
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研究分担者 |
今井 弘民 国立遺伝学研究所, 助教授 (10000241)
川本 芳 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (00177750)
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キーワード | ヒト上科 / 構成ヘテロクロマチン / 減数分裂 / キアズマ形成部位 / キアズマ頻度 / テロメア / フサオマキザル / ニホンザル |
研究概要 |
今年度は、ゴリラのβ-サテライトDNAに関するより明確なデータが揃ったので、ヒト上科におけるrDNAとβ-サテライトDNAのゲノム内拡散の進化的意義を考察することができた。先ず、rDNAの系統的分化は、セントロメア領域にrDNAを有するメタセントリック染色体(M)(テナガザル型)に動原体開裂が生じ、短腕ヘテロクロマチン部にrDNAを有するアクロセントリック染色体(A)が生じた(シアマン、ゴリラ型)。オランウータンは分化後に、A染色体のへテロクロマチンと核小体形成部位(NOR)の対合現象によってrDNAの拡散爆発が生じ、多くのA染色体(16本)にNORが分散した。さらに、ゴリラが分化した後のヒト・チンパンジー共通祖先種においても拡散爆発が生じ、rDNAが全てのA染色体(10本)に分散するようになった。ヒトβ-サテライトDNAは、ゴリラが分化する直前に祖先型のゲノムに形成され、先ずY染色体の短腕の基部に組込まれた。この組込DNAはヒトまで系統維持されるが、パン属ではその短腕と長腕で大きな増幅が起こった。さらに、ヒト・チンパンジー共通祖先種の八染色体の短腕に組込まれβ-サテライトDNAは、上述したrDNAの拡散爆発と共にA染色体の短腕の端部と基部に分散した。ヒトはこれを現在も維持しているが、パン属のチンパンジーは端部のそれを、ボノボは両部位のそれを消失した。この仮説は、動原体開裂によるA染色体の形成、その後のへテロクロマチンの対合による反復DNAのゲノム内拡散、およびその消失を仮定したものであるが、現在のところこれが最も合理的な考察と考え、論文としてまとめた。 もうひとつの主要課題であるヘテロクロマチンがキアズマ形成部位および頻度に与える影響に関する解析は、モデル動物として使用しているフサオマキザル、ニホンザル、およびコモンマーモセットのキアズマグラフ解析を行っている。
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