研究概要 |
希薄磁性半導体は、非磁性半導体の構成原子の一部を磁性イオンで置換した混晶半導体であって、磁性イオンのスピンとキャリアとの交換相互作用に基づき、通常の非磁性半導体ではみられない新しい物理現象があらわれる。本研究では、新しいIII-V族ベースの希薄磁性半導体、(In,Mn)Asおよび(Ga,Mn)Asについて、磁性と結晶成長条件・キャリア濃度・Mn濃度との関係を実験的に明らかにし、さらにその磁性をキャリア濃度で制御することを目的としている。 本年度の成果は以下の通りである。 (1)低温成長分子線エピタキシによりIII-V族化合物半導体でもっとも多く用いられているGaAsをベースにした新しい希薄磁性半導体(Ga,Mn)Asを創成した。最大のMn組成で0.071を得ている。 (2)(Ga,Mn)Asの組成と格子定数との関係をX線回折により定めた。それによると組成と格子定数は線形な関係にあり(ベガード則)、組成1に外挿した点は(In,Mn)Asから外挿した点と良く一致する。 (3)磁気輸送特性・磁化特性を調べ、(Ga,Mn)Asが強磁性体であることを見出した。これまでに得られているキュリー温度は110Kである。また0.05以下の組成の領域ではキュリー温度と組成が比例する。 (4)(In,Ga)Asバッファ層を挿入して(Ga,Mn)Asにかかる歪みを圧縮から引っ張りにかえることにより磁化容易軸の向きを面内から面に垂直にかえることが可能であることを明らかにした。 (5)周期20nmの(Ga,Mn)As/GaAs超格子構造を初めて作製し、それが強磁性を保つことを明らかにした。 (6)臨海散乱とキュリー温度から強磁性の起源がRKKY相互作用であることを明らかにした。 (7)キャリアがフリーズアウトする試料、n形にド-ピングした試料では強磁性が見られないことから、強磁性はホールが介在したものであることを明らかにした。
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