研究概要 |
本年度は、まずポリマー発光層を有する単層型EL素子について検討した。発光層としてはホール輸送ユニットと電子輸送ユニットを含有するコポリマー系、ホール輸送ポリマーと電子輸送ポリマーのブレンド系、ホール輸送ポリマーに電子輸送性低分子化合物を分散した分散系について検討した。分散系では以前から当研究室で検討している低分子オキサジアゾールを分散した系を引き続き検討した。ホール輸送ユニットには9-ビニルカルバゾールを、電子輸送ユニットには1, 3, 4-オキサジアゾール誘導体含有ビニルモノマーを合成して用いた。まず分散系ではホール輸送性のポリビニルカルバゾール(PVK)に対して30wt%のオキサジアゾールを分散した場合に最も高い効率、輝度を示した。これは低分子オキサアジアゾールを分散する倍に30%付近の濃度のときに最もキャリア再結合効率が高まると考えられる。そこで、コポリマー系、ブレンド系ではこの結果を考慮してコポリマーを合成したち、ブレンド比率を調整した。予想した通りコポリマー系では分散系とほぼ同様の組成比のときに高い効率を示した。一方、ブレンド系ではPVKとポリビニルオキサジアゾールの相溶性が低く、平滑な膜が得られにくく、実験の再現性に問題があった。しかし、発光した素子においては、ブレンド比率が分散系と同様のときに高効率を示した。 次に、電極からのポリマー発光層中へのホールの注入特性を改善すべく、導電性ポリマーのポリアニリンはバッファー層として用いた素子を作製した。ポリアニリンはポリスチレンスルホン酸をド-バントとして用いた水溶性のものを使用し、水溶液から電極上へ塗布した。この上にホール輸送層としてPVKを塗布し、アルミ錯体を電子輸送性発光層として用いた積層型素子では、PVKのアニーリングにより特性が大きく異なった。PVKを成膜した後にアニーリングしない素子では、ポリアニリンを用いない素子より素子特性が低下したのに対し、230℃でアニーリング処理したものでは逆に素子特性は向上した。これは、PVK層をそのガラス転移点以上の温度でアニーリング処理することにより、ポリアニリン層との密着性が増し、ポリアニリンからPVK層へのホール注入特性が向上したものと考えられる。 以上のように本年度はポリマー発光層、およびホール注入バッファー層に関する重要な知見を得ることができた。これらの知見を元に白色発光素子のさらなる高効率化、高輝度化を行う。
|