研究概要 |
本研究は,フタロシアニン,BTQBT,PTCDAなどの機能性有機超薄膜の角度分解光電子スペクトルの定量的解析を中心として,それらの分子配向・配列の定量的決定を実現する事を目的にしている.このため,(1)光電子角度分布計算法の改良,(2)高配向有機超薄膜の作製,(3)角度分解紫外光電子分光実験,(4)表面敏感な他の実験法[ペニングイオン化電子分光法(PIES),高分解定速電子エネルギー損失振動分光法(HRLEELS),低速電子透過法(LEET),低速電子回析(LEED)]による結果との総合的な比較検討により研究を達成する予定である。平成8年度は以下の通り行った。 実験 (1)始めにフタロシアニン類に対象を絞り、その配向成長条件、定性的配向、分子の裏表の区別、二次元格子構造をLEET,PIES,HRLEELS,LEEDで調べた。単分子膜形成条件は、PIESとLEETとで調べた。 (2)上記実験で得られた膜成長条件により清浄結晶(MoS_2)上に塩化アルミニウムフタロシアニン,PTCDA薄膜を作製し,放射光励起光電子スペクトルを光電子放出角,試料回転角,膜厚の関数として測定した。また、同時に基板結晶の方位,分子薄膜の二次元格子構造をLEEDで測定した。 (3)迅速な試料交換のため、試料作製室にエア-ロック機構を新設した。 計算法の改良 分子軌道法と、量子散乱論理を組み合わせ,1回散乱近似を用いて,まわりの分子ポテンシャルによる電子波の散乱項を取り込むことで,大きな分子の薄膜の光電子強度をより正確に解析できるようにした。
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