研究概要 |
本研究では、角度分解紫外光電子分光法を中心に,1〜数分子層レベルの膜厚領域における有機薄膜中の分子の傾斜角,回転角を定量的に決定し、超薄膜構造と膜成長について定量的な知見を得ることを目的にしている。上記目的を達成するために、他の実験法[ペニングイオン化電子分光法(PIES)、高分解能低速電子エネルギー損失振動分光法(HRLEELS)、低速電子透過法(LEET)、低速電子回折(LEED)]による結果との総合的な比較検討を行った。以上の結果平成9年度は以下の成果を得た。 (1)新しい有機半導体BTQBTのMoS_2上のエピタキシャル薄膜の2次元格子構造と格子点における2次元分子配向を完全に決定した。 (2)ClAlフタロシアニンなど表裏の区別のある分子、(基板:MoS_2、グラファイト)を試料とし、成長条件、定性的配向、分子の表裏の区別、二次元格子構造をLEET,PIES、HRLEELS、LEEDで研究した。その結果以下のことが分かった。単分子層相当量の蒸着では、(i)基板表面に飛来した分子が基板上を移動し凝集し、いったん島状構造をとり、つぎに加熱あるいは室温による保存で基板表面を熱拡散し、一様な単分子層を形成する、(ii)単分子層では、分子はCl原子を真空側に向けかつ分子面が基板表面に平行になるように配向する。きれいに配向した単分子層上への二分子層目の状着では、二分子層目の分子は完全に表裏を逆転して配向する。この上への三分子層以上の蒸着では分子は二つずつペアになって成長し、奇数層が存在しない。このように単分子層から分子配向を制御して成長させることにより多分子層膜に至るまで島状構造をとらない薄膜が成長させうることが分かった。また、分子の二次元格子構造と基板表面結晶軸に対する回転配向角も決定した。
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