研究概要 |
本研究の目的は、物性物理学と電子工学の境界領域の研究という立場から、強誘電体薄膜の基礎的問題を解明し、将来の電子素子の工学課題を解決することである。第1目標は、申請者が既に提案している〈全ペロブスカイト強誘電体/半導体構造〉の物性開発とその発現機構の解明により、技術的萌芽を育てる。第2は、極薄膜単結晶粒の測定により、微小誘電体の極限物性と微細化の極限を解明する。特に、結晶整合した単結晶的強誘電体ヘテロ構造により、強誘電体本来の物性を抽出し膜厚依存性のモデルを提案する。従来よりこの予備検討をしてきたが、本年度は、この構造をエピタキシャル3次元ICに用いる提案を追加した。平成7年度に企業から大学に移籍し、本申請により研究体制を整備中である。まず、従来の薄膜の改良のため、新規なスパッター法が可能な装置を設計し、初期運転を開始した。これと並行して、今迄検討したPb(Ti,Zr)O_3やBaTiO_3等のABO_3型強誘電体に加え、層状構造や持ち半導体の格子定数により近いB_4Ti_3O_<12>をペロブスカイト半導体上にエピタキシャル成長した。この薄膜では、格子定数に極めて強い応力が認められ、結晶整合しやすいことが発見された。また、この薄膜を厳密に測定解析したところ、X線回折の標準データには疑問がもたれた。さらに、この電気特性はABO_3型とは異なり、電流のメモリー効果や緩和電流が小さいことが分かった。さらに、低ノイズ測定システムを作製しSiO_2/Siヘテロ膜を用いたモデル実験により、過去の強誘電体のサイズ効果の実験が誤りである可能性が示唆された。また、微小領域の強誘電体物性を測定する装置を設計し、組上げと試運転を開始した。 平成9年度は、強誘電体/半導体の安定性と電流伝導に関する統一理論を完成させ、また、今年度試運転を開始した上記の装置、薄膜作製装置による原子層レベルの層制御をした超薄膜の作製、微少領域の強誘電体物性を測定を開始する。
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